日時:2023年9月17日(日)14:00~16:30 場所:霞城セントラル23階 高度情報会議室 参加者:29名
今回の『第2回 山形吃音のつどい』を開催をきっかけとして、無事、山形言友会の発足宣言を行うことができました。これからは交流会をメインに活動を行っていきたいと思います。
今回のつどいでは、運営スタッフ5名を含む、計29名の方にご参加いただきました。はじめに『吃音の「克服」と言友会』と題し、横井 秀明先生にご講演いただき、その後は、参加者の皆様とグループディスカッションを行いました。以下、グループディスカッションで話された内容の一部をご紹介します。
目次
グループディスカッションのまとめ
テーマ①『人間関係や家族について』
テーマ②『仕事や就活について』
テーマ③『学校や進学について』
テーマ④『支援と啓発について』
グループディスカッションのまとめ
『人間関係や家族について』・『仕事や就活について』・『学校や進学について』・『支援や啓発について』のテーマ毎にグループを作り、それぞれ自由に話し合いました。以下に主な内容を記します。
テーマ①『人間関係や家族について』
子どもから「友達に、誤解されないように状況を説明したかったのに、吃って言葉が出なかったから言うのを諦めた。」など話をされた時、どのように接したらいいか悩んでいる。 →子どもと吃音の事を話せる関係が凄く良いと思う。誰にも言えずに吃音のことで、一人で抱えてきた方もたくさんいる。話を聞いてくれる人がいるというだけで心強いと思う。ただ話を聞いて欲しいだけかもしれない。「吃音」ということに意識が向きがちだが、誤解されたのではないかという不安気持ちや、言うのを諦めたという残念な気持ちを受け入れて欲しいだけかもしれない。下手に「もっとこうすれば…」などアドバイスをされると話したくなくなるかもしれない。何も言わず、話を聞いて気持ちを共感してもらえることで気持ちが楽になると思う。
今年に入って人間関係がうまくいかず吃症状がひどくなった。周囲の仲間からは吃音の症状に気を遣われているような気がして、益々話せなくなる。吃音の事を気にせずに何気ない会話をしてくれるとありがたい。普通に接して欲しい。孤立してしまう。会話に入りたいけれどタイミングがわからず入れない。 →話す方は直ぐに声がでないこと、話始めるまでに間があいてしまうことなど、凄く気になって、おかしいと思われるのではないか、気を遣わせてしまうのではないか等と考えてしまうけれど、実は、相手はそこまで気にしていないと思う。「何を言うのかな…」と話の内容に気を取られていることの方が多いのではないか。話の内容が面白ければもっと聞きたくなるということもある。とは言え、そんなことは直ぐにできないこともわかる。場数を踏む、話す経験を積むということが必要なのかもしれない。
ことばの教室では、吃音を意識させないかかわりが中心になっていた。その中で親は「治したい。」「本人の辛さを取ってあげたい。」と思っているのが伝わってくる。そのような中で、「治したい、スラスラ読めるようになりたい。」という思いに寄り添い、一緒に頑張ろうと付き合ってもいいのではとアドバイスを受けて納得した経験がある。利用児童が「もうことばの教室は卒業したい。」と思っていても、親御さんが「治るまでまだ利用させたい。」と…親子で気持ちのすり合わせが出来ていない場合などがあり、その対応に苦慮している。 →もうかなり前になるが、ことばの教室を利用していた時は、吃音に触れないように、意識させないようにするという指導が中心だったため、自分は何のためにここにきているのかわからずにいた。正直言って、通わせられているという状況だった。何のために来ているのかとかも含めて「話せる場がある」「リラックスして思う存分話せる」「吃音の事がわかる」というような場であれば良かったかなと思う。
テーマ②『仕事や就活について』
就活で吃音の事は話さなかった。話して何らかの配慮に繋がれば良いとは思うが、不利になることの方が多いと考えている。吃音のことを話すことに恥ずかしさもある。吃音はマイナスにしかならないと考えている。 →今は吃音に対して社会的に認知されてきているので、カミングアウトはしやすくなっていると思う。 →面接では、苦手な音が語の始めにならないように工夫することは割とよくある。 →面接というと自分が選ばれる立場なので緊張してしまうが、見方を変えれば、この会社を自分が選んでいるとも言える。どんな役員がいるのか、どんな会社なのか、自分が働き易いかなど、「見極めてやる!」という気持ちで臨むのもありじゃないかと思う。
話さなくていい仕事を選ぶこと多くなるが、就職してみると実際はそうでもない。好きなことをやるためには嫌なこともしなければならない、これは吃音も同じように思う。 →吃ってしまいどうしようもなくなった時のため、いざとなったら使えるように、吃っても通じる状況を作っておく、視覚的な資料を用意するなど代替手段を用意しておくようにしている。そのことが安心材料になるのか、話しやすくなることもある。
大学のサークルに入った。話さなければならないことが多い環境にビックリしてしまってから言葉が出なくなった。慣れていない人とか場所だとますます緊張して話せなくなる。
人のいる環境にいると、プレッシャーを感じて逃げ出したくなることがあった。人前で話さないといけない時は、言葉が上手く出てこず言い換えをしてしまうので、回りくどい言い方になってしまう。
情緒面での不安が大きく影響しているという報告がある。吃ったことがトラウマとなりまた不安になる。
高校の部活が厳しく、審判の役割をしなければならなかったことがとてもキツかった。
自分が吃っている姿は、カミングアウトしていない人や自分を良く知らない外部の人からは見られたくない。
あまり吃っていない姿を見られていると、配慮を求めても軽く流されてしまうこともあるのも悩みなっている。
テーマ③『学校や進学について』
我が子は話すことは嫌ではなく沢山話す方。お友達とも話しているし、お友達から話し方の事で何か言われたこともない。それなのに授業では発表を嫌がり殆ど話さない。授業中でも積極的に発言してほしい。担任が変わって配慮がなくなった。これまでの担任は事前に練習させてくれるなど色々付き合ってくれていたが、今は、配慮されることはない様。
ことばの教室に通っている。「言葉を言い換えることができるよう、語彙を増やしていきましょう。」という指導が中心。親としては治してほしい気持ちがあり、もどかしさを感じている。 →ことばの教室は、子どもがそこへ行くことを楽しみにしている場になっているかが大事。吃ってもそれを気にせず話すことができる場、リラックスできる場、子ども自身がここに来ることで、「次また、頑張ろう!」と思える場になっていれば、そのことがお子さんの吃音に良い影響を与え、結果として症状の改善に繋がる。親は、そのような場になっているかを見てあげて欲しい。
ことばの教室の先生からは、「お子さんが吃っている時は、話の中身がわからなくてもその場では伝わっている振りをして、後で、さっきは何って言ったの?と確認する。」ように言われている。その場で聞き返すなどはしてはいけないのか? →時と場合によると思う。子どもは、伝えたい気持ちが強くなればなるほど、言葉がスムーズに出にくくなるということは普通にあること。話の文脈である程度話したいことがわかっている状況であれば、「何?~なの?」と言ってあげても良い。先に言って貰ったことで安心して話し易くなることもある。逆に内容がわかっていないのに「~なの?」「~なの?」と先取りされると、「もー!止めて…」ということにもなる。大事なことは、コミュニケーションの流れを止めないこと。心地よいやりとりを大切にすること。
話したいことがわからない時はどう対応すればいいのか? →「きちんと話を聞くから大丈夫だよ。」「そんなに大変な思いをしてでも伝えてくれるんだね。ありがとう。」という気持ちで待ってあげてもいい。「吃っている」という表面的な状態ではなく、内面を見ることが大切かと思う。
吃音について、これまで、ことばの教室の先生以外から聞く機会がなかった。
生活の中で親は子どもの様子を見て、子どもに「何か嫌なことがあったのかな…」と感じた時には、さり気なくフォローする。いちいち「何があったの?」等聞かない方がいい。子どもにもプライドがある。嫌な姿を見られたくない、知られたくない、親に心配をかけたくないと思っているかもしれない。なかなか自分からは悩みを打ち明けられないもの。家が居心地の良い場になるよう優しく包み込むことが大事。子どもは「吃音で悩んでいる僕」を見て欲しいのではなく、「僕を見て欲しい」と思っているのだから。
テーマ④『支援と啓発について』
自身も吃音だったため、障がい者の雇用につとめている。仕事は自宅で出来る仕事であり、電話対応などの負担もかけずに働いて頂いている。
吃音だから営業が向かないということはないと思う。むしろ、一生懸命話をするので相手も一生懸命聞いてくれるということがある。実は、プロポーズの時も「吃音は意外に支障がないな~。」と感じた。
ことばの教室では、まずは自己肯定感を大事にしている。小学校を卒業してからの相談機関が少ないので、今後、関係機関と連携が進んでくれば良いと思う。ことばの教室も学校毎にあるわけでもないので、他校から通う必要がある場合は、通うのに負担が大きいというハードルがある。地域と連携しながら、地域で相談できる場所があれば良い。
就職が上手くいかないという相談を受けたが、何処に相談していいのかわからない。相談する場所が少ないのが現状。
小さい子は上山の療育センターに行くが、頻度多く利用できるわけでもない。もう少し近い所で、思い通りに療育を受けられる環境があれば良いのにと感じている。
就職が難しい場合の選択肢として、障がい者手帳を交付してもらうことで合理的配慮を求めるということがある。一方で、「吃音を理解して欲しい」「普通に接して欲しい」とは言えるが、具体的にどうして欲しいのかが言えないというもどかしさを感じている。
現在の親御さんは、吃音に対しては理解しているが、色々な不安を抱えているので、親御さんの気持とお子さんへの想いを大切にしていって欲しいと考えている。
文責:今泉
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